1983年2月11日金曜日

1983年2月11日(晴)

9:00ころ起床。いつもの通りに子供達はすでに起きている。朝食は、パン、おむすび、ハムとキャベツの炒め物。ゆっくり食べると美味しい。

長女はピアノのグレードテストの練習のため、10:20ころに出かけた。次女とボールを持って小学校の校庭で遊んだ。11:30ころに帰宅したが、次女は外で友達と遊んでいた。昼食はおもちを食べる。

長女はピアノ教室の後、アイスなどを食べて13:00ころに帰ってきた。子供達は外へ遊びに出た。

和室で本を読もうとしたが、陽が差して暖かく昼寝をすることにした。15:00ころ、長女の声に起こされる。起きたとたん体がだるい。

長女はマンション玄関で遊んでいて、あごの下を1cmくらい口を開けたケガを負っていた。口が開いているので、妻が外科へ連れて行った。特に縫うこともなく大丈夫のよう。3000円とられたとのこと。

今日は祭日なので明日精算するとのことであるが、ちょっと高い感じがする。

夕方から「金環蝕」(石川達三)の続きを読んだ。

新しい通産大臣大川は新しい首相寺田派の人間である。このたびの総裁選挙には15~20億円の金が使用されたという。寺田の対抗者酒井も同様に金を使用した。この金は民政党の国会議員を買収するのに使用、このおかげで寺田は首相となり権力と名誉を得る。

この大金を何で補うかが問題。寺田首相、および内閣官房長官星野は一時民政党費をごまかし使用するが、いずれ何としてもその金の工面が必要であった。

とりあえず5億円という金が必要となり、その一部を石原参吉に頼むため、部下西尾に打診させる。石原は何かあると思い断るが、西尾の名刺と用件をひかえて保管した。

電力建設は九州Fー川ダムの建設プロジェクトを持っており、この仕事をめぐってすでに青山組、竹田建設の暗躍が行われていた。電力建設の現総裁財部は、今までも青山組に恩義を感じており、青山組に何とか今回の仕事をやらせたいと考えていた。

一方、副総裁の若松は竹田建設と関係が深く、竹田と考えていた。

星野は資金に、政治献金させることを考え、竹田建設の朝倉専務と会い、政治献金を依頼する。朝倉は、今度の九州F-川ダムをやらせてくれるならその一部で5億円の献金を考えるとの提案を副総裁にもちかけ、副総裁にこの方向で行えるよう星野、通産大臣大川に話をもちかけることを依頼した。

これにより、竹田建設、若松副総裁、星野官房長官、通産大臣大川、それに寺田首相は、竹田に入札させるため行動を起こす。

竹田入札に最も障害になるのが財部総裁であった。財部はこの動きを知り、任期の9月末での間に何とか入札まで行い、青山組に入札させて、自分は退職しようとする。青山組は、もしうまく入札させてもらえば財部の行き先は保障すると伝え、財部に期待する。

まもなく、通産大臣大川から竹田に入札させるよう話があり、また寺田首相の夫人からも依頼があった。

財部は、竹田に入札させることは絶対やりたくなかったが、大川など云う通り従えばもう4年間留任となり安泰ということを考えると、迷いが出てきた。しかし何とか青山組ということで任期中に入札しようと入札を急ぐことにした。

大川はこの急ぐ話を耳にして、朝倉と話し何とか財部をやめさせることを考える。手段としては金であった。朝倉は財部を金で縛ることを考え、5000万円渡すから退いて欲しいと云う。大川からも退職金ははずむということで退職をせまる。

この時の朝倉からの

「大好きなものにまかれるにも、うまくまかれのと、わるくまかれるのでは大きな違い。うまくまかれておく方がいいですよ」

ということばに迷う。

どうせまかれるならうまくまかれた方が良い。財部は何とか独りでもまかれないようにしようと気もある。気持ちがギクシャクしている時、ふと古垣に会うことを考え「辞職をせまられている」、「寺内夫人までが名刺で竹内をよろしくと云っている」など、自分の立場を話してしまう。

結局、うまくまかれる方を選択し、任期を1か月残して辞職する。理由は一身上の都合となっており、退職金は2500万円と大きな額であった。一方、竹田の方から7000万円の金を受け取った。

これにより、この汚職事件の一つの障害が取り除かれ、その障害者も実は汚職にまき込まれた。

さてこれで、後任総裁に松尾芳之助という寺田派の人間を任命し、次は入札をいかに竹田に入れるかであった。

その方法は、結局こうだった。

見せかけで、工事費の算出は極秘にしたというように見せるために、2週間山の温泉に作業者をカンヅメにする。ローアリミットの算出は、理事会でのくじ引きで決める方法であった。しかし、この工事費の数値も竹田に流れており、またローア―リミットもあらかじめ7%と決めておいて、くじの不正により決められた。

入札はローア―リミット以下は失格という方法で、実は算出額自体も5億円の献金を含めるために多い目に見てあった。

深川組  39億6千万円
青山組  40億8千万円
大岡建設 39億9千万円
竹田建設 45億2千万円
高田建設 39億5千万円

さて、工事予定額は、48億1千万円。ローア―リミット7%として、最低価格は44億7千万円となり、竹田以外は下限を割って失格、竹田に決まった。竹田はさっそく、5億円の献金を星野に実践する。

神谷代議士は民政党員であるがどの派閥にも属さなく、今回の総裁選の資金に民政党費が使用されたり、F-川ダムの入札に関する不正など、情報を古垣および石原から入手していた。今回の不正を予算委員会で追及すべく準備を整えていた。

一方、西尾秘書官の所へ寺田首相の夫人が会いに来て、「竹田をたのむ」といったことをもらしたのはおまえと云い、それなりに責任を取れと云う。西尾はノイローゼとなる。

西尾はただ、星野から指示され名刺を持っていただけで、この背後に大汚職事件が絡んでいたことを知らなかった。西尾は飛び降り、過失死する。

これはどうみても自殺であったが、自殺とすると何故ということになり汚職の話が公にされる可能性があり、警察庁に圧力がかかったものと思われる。

予算委員会で、神谷は松尾、若松、財部などに質問するが、肝心の所では記憶にないと逃げる。財部についても、辞職に圧力があったかという質問に全然なく、あくまで健康上と答えた。古垣に話した話した内容についてもその憶えはないとした。

次の古垣に対する質問が行われる当日になって、古垣は殺された。公には甥の折二郎が三角関係により殺したとされたが、実際には寺田首相一派の仕業とされた。

まもなく寺田はたおれて、首相は酒井にかわる。故に、通産大臣、官房長官もかわり、当時の汚職のメンバーはいなくなる。

星野は神谷に、予算委員会での追及をやめさせようとするが、国税を無駄に使用している不正を正すのが正義として受け付けない。しかし、幹事長が金で片づける方法ではなく、海外視察に行くよう指示し、2000万円を渡し、追及を止めることになった。

結局神谷も同じ民政党の人間で、国民のために事実を明かすことを真意とせず、売名行為でしかなかった。またこの汚職事件の各種情報をとっている石原は、詐欺などの名目で逮捕され、資料は押収される。しかし、重要な資料は別のアパートに隠してあったが。

この逮捕も首相からの圧力によるもの。これにより、今回の汚職の重要な情報を持ったものが抹殺され、何もなかったように政治は動いていった。

まもなくダムが完成すれば、当時の大川大臣、若松、松尾、竹田は、その功績者として勲章までもらうことになる。汚い事実は全く知らされずに。

「(この大汚職事件を)一般庶民は何も知らなかった。彼らは営々として働き、その収入から高額の租税を納めていた。文字通り血税と云われるような税金であった。それが政治の上層部では、個人的な権勢慾や野心、名誉慾のために濫費されたのだった。しかし、彼らは庶民の上に立ち、権力をふるい、そして赫々たる栄誉をあたえられているのだった。」

この小説の最後の言葉は、今の我々の世の中にもいえることで、怒りを禁じえない。しかし、我々は何も手段を持っていないが、残された手段は選挙である。

少なくとも今の保守政権はこの小説ズバリのことを今も続けている。田中角栄の事件も全くこの小説と同じものである。腐敗保守政党には絶対投票すべきではない。

今のこのような不正を暴くには、同じ政党内の人々からは不可能で、また現在の検察庁も上からの指示によって捜査を中止するなど、不可能なようである。

残る手は選挙により政権から落とすしかない。しかし選挙も金で買収など不正が行われており不可。そうすると、残る手段は保守政党内にだれかスパイで入って、そのスパイが首相として不正をなおすしかないのか。

この小説での場面について。

①大臣が財部に辞職をせまる時、まずは世間話をして、核心にせまる。こういう時には、何かあると考えなければ。

②財部が辞職することを決断。私ならどうするか。もし竹田にやらすとすれば、完全に汚職に巻き込まれる。しかし、辞職をとったにもかかわらず汚職に巻き込まれ、予算委員会では「うそ」の発言をせざるを得なくなる。どちらにしても財部はこの汚職に巻き込まれる運命にあった。

この運命を変えるには、金ももらわずに辞職することしかなかった。私はこのような立場になることもないと思うが、金も拒否、辞職をとることになると思う。庶民が庶民として生きていくにはその決断が必要である。

法治国家日本の法律は、庶民に対しては厳格に適応される。しかし、保守政治家、官僚に対しては全くの治外法権となっている。これが民主国家といわれる日本の実態である。この実態を国民は知らないし、感じていてもどうしようもない。

先日、中川一郎氏が自殺した。これも疑問だ。中川と中曽根は総裁選でおそらく多額の金を使いはたしている。その金はどこかの献金で処理されているはず。特に中曽根は政権をとったことにより、かなり悪い手を使い帳尻を合わせる。

その一つとしては、防衛費を大にして、その中から「金環蝕」のような形で献金された可能性もある。大切な税金が、政権党の私欲の経費に使われる。

この中曽根の弱みを中川が知っていた可能性が強い。自殺としているが、実際は何らかの形で中曽根が殺したと考えてよい。

この小説を読んで、今の保守政権の出来事がすべてうまく説明できることから、事実と考えてよいようだ。

昼寝が悪かったのか、7.5℃の熱があった。本を読み終わり薬を飲んで1時ころ寝た。

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